「ヒューゴ オバケと鬼ごっこ」─やけに足の早いオバケから逃げるグルグルすごろく─

「ヒューゴ オバケと鬼ごっこ」は、やけに足の早いオバケから逃げ惑うグルグルすごろく。こどもが遊ぶとテンション高くなりがちでありつつ、ちゃんと考えどころもあります。

箱の中にはたくさんのコマと雰囲気あるお屋敷のボードが入っていて、ビジュアル的にまずにぎやか。お屋敷で開かれたパーティーに出現したオバケのヒューゴから、自分のコマを逃がすことがゲームの目的です。

さて、ゲームは2~8人で遊べて、4人プレイ時のセット例はこんな感じ。各プレイヤーは順番に、複数ある自分のコマを廊下のマスへと一体ずつ配置していきます。配置には考えどころもありますが、これから先の説明で察せると思いますのでここでは省略し、セットが完了したこととします。

自分の番でまずするのは、サイコロを振ること。6面は「1・2・4・5・オバケ・オバケ」という構成。数字の面が出たら、自分のコマのうちどれかをその数だけ進めて、次のプレイヤーに交代です。

コマの配置時と異なり、すでに別のコマがいるマスにも入れます。また、ボードには部屋がありますが、まだ入ることはできません。これからオバケが出ることも知らず、パーティーを楽しんでいるという感じです。

サイコロでオバケの面が出ることがあります。この面が出たら、オバケが突き進んできます。

ゲーム開始時はボードの真ん中にある地下牢の最深部にいるオバケのヒューゴ。オバケの面が出ると、ヒューゴは3マスずつ進みます。

このとき、なぜだか自然発生しがちなのが「ヒュ、ウ、ゴ!」のかけ声。ヒューゴを進めながら、いつしかみんなで声を合わせていることが多いです。オバケが迫ってくるスリルを、声に出して共有してるみたいに思えます。ルールでもないのにこんな風になるゲームって、あんまり思い浮かびません(笑)。

ヒューゴが地下牢から出てきたら大変です。ここから先、ヒューゴに追いつかれるとそのコマは地下牢送りになってしまうからです。追いつかれたコマは、ヒューゴをカポッとかぶせて…

地下牢のマスに閉じ込められます。最初に送られるとマイナス10点。以降、マイナス9点、8点…と変化しています。長く逃げれば逃げるほど、マイナス点は減っていくわけです。このあたりを踏まえると、ゲーム開始時のコマの起き方に考えどころが出てきます。

それでも、サイコロに2面あっていっぺんに3マス進むヒューゴはかなりの早足。コマがどんどん捕まっていくことも多いでしょう。

ただし、コマはただ逃げ惑うだけではありません。ヒューゴが廊下に出てきたあとは、ボードを囲むように並ぶ部屋へと逃げ込むことができるようになります。ドアのマークのあるマスから部屋の中に一歩進めば、もう安全です。そのコマはヒューゴに捕まることはありません。部屋に入るのにサイコロの目がちょうどでなくてもオッケー。また、コマが1つ入ったら内側から鍵をかけるようで、それ以降もう誰も入れません。

特別な部屋もあります。緑の盾が描かれた部屋にコマを入れるとプラス3点。ただし、この部屋はサイコロの目がちょうどでないと入れないので要注意です。緑の盾の部屋に入りたい……じゃあコマを待機させるか…いや、それだとヒューゴに捕まっちゃうかも……。ジレンマのある考えどころです。

部屋の中には赤い盾の描かれた部屋もあります。こちらはちょうどでなくても入れますし、入ったらヒューゴに捕まることはありません。しかし、中にはいたずらオバケがいるという設定で、マイナス1点。小さな失点をあえて受け入れるかどうかも考えるポイントになってきます。

こうしてゲームが進むうちに、コマがどんどん部屋や地下牢に入っていきます。

そのうち、自分のコマが全て部屋か地下牢に入ったプレイヤーも出てきますが、それでも自分の番が回ってきたらサイコロは振ることになっています。数字が出ても進めるコマはありませんが、オバケの目が出たらヒューゴを進めます。

さっきまでは「オバケ出るなよ…」と思っていたはずなのに、この立場になると他のプレイヤーのコマを捕まえるために「オバケ出ろ~!」となるわけです。立場の違いによって気持ちが変わるのもおもしろどころです。

こうしてゲームを続け、全てのコマが部屋か地下牢に入ったらこのラウンドは終了。一旦点数の精算をして、マイナス10点の地下牢にいるコマから順番に廊下へコマを配置し、次のラウンドに入ります。3ラウンドおこなって得点計算をして順位をつけるのが、マニュアルのルールです。

一緒にやっていてしばしば出会うのは、どう考えても部屋に入った方がいいのにコマを進め続ける子。勝敗を越えたギリギリのスリルを試しているように見える気もします。ほとんどの場合そのうちオバケに捕まってしまうのですが、ルールの中で試せる限界に挑戦したい気持ちになるのかもしれません。

また、子どもは大人の何倍もの強さでゲームの世界観に入るもんだな…と感じることがありますが、この作品はそれが特によくわかります。ヒューゴが迫ってきてワーワーキャーキャーするのが楽しいゲームです。

(おわり)