「フィンカ」─地中海の島で作物集めと配達のジリジリバトル─
地中海に浮かぶスペインの島、マヨルカ島。「フィンカ」はこの島を舞台に、作物を集めて村へと配達するゲームです。
箱絵のように景色がとてもきれいな島。コマの色合いもパステル調でかわいらしいのですが……いざゲームが始まると、計画や駆け引きでしっかり考えさせられます。
フィンカとはスペイン語で「農園」。ゲームの目的は、さまざまな作物を集めて村の需要にあわせて出荷すること。開始前の準備として、10個ある村に4枚の「需要タイル」をランダムに重ねて置きます。
例えば「リュグマジョー村では、レモン2つと魚を2つを欲しがっている」というわけ。需要に応えるために自分の番でおこなうのが「作物の獲得」です。
このアクションでは、開始時に風車ボードへ置いたコマを1つ選んで移動させます。そのルールは「移動元のマスにあるコマの数だけ進めて、移動先のマスにあるコマの数だけ表記の作物をもらえる」というもの。
3人プレイの例では自分のコマは4つ、選択肢も4つ。今どれを動かせば需要にあった作物を得られるか…と、風車とボードをよく観察するのがポイントです。
また、場合によっては作物の他に得られるものもあります。
それはロバカード。風車にあるロバのラインを越えると1枚ゲット。これはもう1つのアクションである「出荷」に必要なものです。ここではロバを入手したので、次の番で使って出荷することにしましょう。
カードを裏返すと6つのカゴが描かれています。これは1回の出荷で作物を6つまで出荷できる、という意味。
というわけでリュグマジョー村の需要にあわせて、レモンと魚を2つずつ出荷。合計4つなので4点となるタイルを手元に置き、下から次の需要が見えるというわけです。
…いや、ちょっと待ってください。出荷では6つまで作物を出せます。カゴに空きがあるのはもったいない気がします。ここはあせって出荷せず、よくボードを観察しもう少し作物を集めた方がいいかもしれません。
オレンジを2つ集めれば、いっぺんにリュグマジョー村とビラフランカ村に出荷できて6点獲得です。
貴重な自分の番を使うからには効率的に行動したいところ。ただ、こんなに都合よく集められるとは限りません。他のプレイヤーに先んじられるかもしれません。ならば少し損しても早めに出荷するのもありなのでは……と、ジリジリさせられるのがこのゲームのおもしろどころです。
たくさん集めてドーンと出荷、基本方針はそれでよさそう。ただ、そうも言っていられないことも起こるんです。
上の写真は、ピンクのコマを2マス進めた先で4つのブドウをもらえるはずの場面。ただし、ストックにはブドウが2つしかありません。このとき、島の長老が「おーい、ブドウが足りんぞ!全員戻せ~!」と言うのかどうかはわかりませんが、全員が手元のブドウをストックに戻さなければならないルールなんです。
せっかく集めたブドウが…と、かなりのショック。それを避けるためにストックを常にうかがうことで、ジリジリ度はさらに上昇。逆にうまくコマを動かして自分以外に不利益を与えてほくそ笑む…なんてこともあり得ます。
こうしてゲームが進んでいき、各村の需要タイルが減っていきます。
村の最後の1枚になったら要注意。各村ラストの需要タイル(四角)が獲得されたとき、隣の農園タイルが誰の手に渡るかが決まります。上の例でオレンジが描かれているのは「ここまでの時点でオレンジを最も多く出荷したプレイヤーにこの農園タイルを得る(5点)」という意味。
ぜひ狙っていきたい農園タイル。最後の需要を満たして自分が農園タイルも得られるならいいのですが、そうもいかないのが面白いところ。人の手に農園を渡すくらいなら他の選択肢もあるはず…と、ここでもジリジリさせられます。
空いた村には建物コマを目印として置いておきます。このコマが全てなくなったらゲームは終了。村は10個あるのですが、建物はそんなにありません。つまり、全部の需要タイルがなくならないうちにゲームは終わってしまうのです。
ボードと風車とみんなの手元を常によく観察して進めるのがポイント。他者の動きでしてやられた!となるのも、人の動向を縫うようにして利益につなげるのも面白い場面です。
通常のゲームに慣れたら、追加ルールを加えて戦略性を高めることもできます。需要タイルの数字コレクションをしたり、各自配られた特殊効果を使ったりと、読み合いがさらに深まりそうです。
箱デザインのさわやかさで手に取った方が、いざゲームが始まると静かにうなって考える…というのがこのゲームの印象です。複雑なルールはちょっと敷居が高い、でもしっかり状況把握や戦略の醍醐味を味わいたいな、という方におすすめのゲームです。
(おわり)