「カウント ユア チキンズ!」─ニワトリかあさんが戻ってくる前にヒヨコを小屋に戻そう─

「カウント ユア チキンズ!」は、ニワトリのお母さんが帰ってくるまでに遊びに出てしまったヒヨコを小屋に戻すことを目指す、全員協力型のゲーム。ルーレットを回したり、数を数えたりと、小さな子がゲームの基本を楽しむのにぴったりのゲームです。

(※今回はいつものようなゲーム紹介をしたあとに、普段は書かないような細かいゲームの特徴も書いてみます。)

箱には3歳からとあるこのゲーム、実際に小さな子と遊ぶときに話をするように、物語を紹介するところから始めてみます。

「あるところにニワトリのお母さんと、子どもたちのヒヨコが住んでいる小屋がありました。ヒヨコたち、ぎゅうぎゅうですね。」

「ある日、お母さんニワトリがお出かけに行きました。ヒヨコの子どもたちはお留守番かと思いきや…」

「みんな、外に遊びに行ってしまいました。このままお母さんが帰ってきたら、『うちの子がいない!』と、びっくりしてしまいます。」

「そうならないように、お母さんが帰ってくるまでの間にみんなでヒヨコたちを小屋に戻しましょう!」

……という感じでしょうか。ゲームは1人から何人でも遊べて、セット例は上の写真のような感じ。お母さんニワトリはスタートマスに、ヒヨコたちはボード上に適当に散らしておきます。

自分の番が来たらまず、ルーレットを弾きましょう。そして、止まった矢印のところに何が描かれているか確かめます。

今回はブタでした。この場合、道のマスを進めてニワトリをブタのいるところまで動かします。出た動物の直近のマスまで進めるというわけです。

このとき、「いち、に、さん」という具合に声に出しておくとわかりやすくなります。

と言うのは、ニワトリを進めた数だけヒヨコを小屋に戻すことになっているからです。ニワトリを進めた数に対応させて、ヒヨコを数えながら小屋へと移動させるということは、小さい子にとって「同じ数を違う形で繰り返して数えるという経験」になりそうです。

ただし、うまくいく場合だけではありません。ルーレットでキツネが出た場合、小屋にいるヒヨコを1羽また外に出さなくてはいけません。成功を目指す中で、残念なことも起きるわけです。

ラッキーなこともあります。青いマスの絵は、動物の上にニワトリが乗っているものです。ここに止まった場合、進んだ数より1羽多くヒヨコを戻します。残念だったり嬉しかったりを繰り返しながらゲームは進んでいきます。

さて、数を数えることがテーマのこのゲーム、ニワトリの位置とルーレットで出た目によって進む数は変わってきます。先ほどの例では3マス進みましたが、上の写真の場面ではイヌが出たので、12マスも進むことになります。

ニワトリを12マス進めて、そのあとヒヨコを12羽小屋に戻す。子どもの年齢や経験によってはこれは結構大変なこと。「…あれ?」となることもありそうなので、大人が一緒に遊ぶ場合はサポートのしどころになるかもしれません。

こうしてニワトリが進む中で、ヒヨコが小屋に戻っていき、ニワトリが小屋につくまでに全てのヒヨコを戻せればミッション成功、というわけです。

このゲーム、実は選択肢のない100%運のゲーム。運100%で競うタイプのゲームはときどきあるのですが、運だけで進む協力型ゲームというのはとても珍しい。考えどころがない分、このゲームのテーマである「数を数える」ということだけに集中できそうです。

考えどころがないということは、ゲームの手続きに純粋に慣れるという経験のしやすさにもつながります。加えて全員協力型なので、「うまくいくかな…どうかな…?」という感じで進むドキドキを共有しながら遊ぶのも楽しいゲームです。

(いったんおわって続く)


ここまででこのゲームの内容紹介は終わりなのですが、普段は省略して書かない、小さい子向けの特徴という点もいくつか書いてみます。まずは、「ルーレットを指で弾いて回す」という点です。

このルーレット、上の写真のように「人差し指を曲げて親指の根本に引っ掛けて力のためを作って弾く」というデコピン的なやり方だとうまく回りません。一周した矢が親指に当たって止まってしまいます。大人でも初めてやると「あれ?」となります。

指の位置を調節すると、これがクルクルクルっとよく回ってとても気持ちいい。その気持ちよさを味わうために、手先の使い方を工夫する経験になりそうです。

また、ある程度数は数えられるけど、まだすごろく的なゲームをしたことのない子は、コマを進めるときにこんな風にする様子をよく見かけます。

「そこにあるものを数える」という経験はしているからこそ、こうするように思えます。「数の分だけ進める」というのは意外と初めてなのかも。大人からすると盲点となっているところかもしれません。

こうした場合の対応は、私の場合…

・間違っていても途中で止めず、子どもがコマを動かし終わるまで待つ。

・コマを手にとって元あったマスに戻し、「こういう場合は、こうやってやるよ」と言いながら正しい進め方をする。

・再びコマを元あったマスに戻し、子どもに「もう1回やってみて」と促す。

という感じで接することが多いです。それでも間違える場合もありますが、そうした際はマスのところで指を動かして、正しい進め方をナビゲートするとよいかもしれません。動かし方の意味が飲み込めなくて「…?」となっている場合は、立ち上がって両足跳びで進みながら「1、2、3!」とやるとイメージの把握につながると思います。

続いて注目したいのは、ボードの折り目。

多くのゲームのボードは片側だけにしか折れないようになっていて、反対に無理に折ろうとするとバキッと破れてしまいます。これ、小さな子が一生懸命片付けようとするときの「ボードゲームあるある」の1つでしょう。

でもこのボード、どっちに曲げてもオッケー。小さな子向けのゲームとして、よくできてるなと思わされるところです。悪気のない事故を未然に防ぐちょっとした配慮です。

箱には3歳からと書かれているこのゲーム、ゲームに慣れた大人だと当たり前のように身に着けていることが、小さな子も経験できるような工夫が散りばめられているゲームです。

(おわり)